地震保険の考え方|火災保険との関係・補償の特徴・必要性の判断
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「どこで入っても同じ」地震保険が、ほかの保険と決定的に違う理由
生命保険や自動車保険を選ぶときは、何社も見積もりを取って比べるのが当たり前です。ところが地震保険には、その「比較して安いところを探す」という発想が、そもそも通用しません。理由は、地震保険が民間の保険商品でありながら、その裏側に政府の再保険(国が保険会社の支払いを支える仕組み)がついた、半分公的な制度だからです。1966年に新潟地震をきっかけに作られて以来、この「官民で巨大災害のリスクを分け合う」骨格は変わっていません。
巨大地震は、一度起きれば一社の保険会社では到底払いきれない規模の支払いが発生します。そこで国が後ろ盾に入り、その代わりに補償の中身も保険料も、制度として全社共通に定められています。だから「A社の地震保険はB社より2割安い」ということが、原理的に起こりません。これを知らずに「安い地震保険を探しましょう」という勧誘に乗ってしまうと、的外れな比較で時間を使うことになります。
この記事は特定の保険商品をすすめるものではなく、一般的な情報提供です。地震保険の独特な料金の決まり方、4段階の損害認定、補償額のキャップ、見落としがちな割引と税控除、そして火災保険とのセット契約の勘所まで、加入を判断する前に押さえておきたい実情を整理します。制度の細部は時期によって変わるため、最終的な条件は各社の公式情報・損害保険料率算出機構の公表資料などで必ず確認してください。
地震保険は火災保険にセットでしか入れず、保険会社による保険料の差はありません。比較すべきは「どの会社が安いか」ではなく、補償額の設定(火災保険の30〜50%)・割引の適用・税控除を取りこぼしていないかです。
壊れ方の「程度」で、してもらえることが変わる
この保険が独特なのは、損害を段階に分けて認定するところです。あとの節で扱うとおり、全部だめになったのか、一部なのかで支払われ方が変わる——つまり「壊れた/壊れていない」の二択ではなく、あらかじめ程度ごとの扱いが決められている、という設計になっています。
買った物に不具合が出たときも、実は同じ考え方で処理されています。まったく動かないのか、動くが一部の機能が使えないのか、見た目の傷だけなのか。修理になるか、交換になるか、返金になるか、あるいは「仕様の範囲」として扱われるかは、たいていこの程度によって分かれます。感情としては同じ「不良品だ」でも、窓口では別の段に置かれるわけです。
だから連絡するときは、困っている気持ちではなく、状態を段で伝えるほうが早く進みます。いつから、どの操作で、どこまでできて、どこからできないのか。中古やアウトレットを買うときに状態の表記を読むのも、同じ物差しを先に共有しておく作業です。程度の言葉を持っていると、受けられる対応の見当が付くようになります(→ 状態を段階で表す言葉の読み方)。
支払いを左右する「4段階の損害認定」
地震保険でいちばん誤解が多いのが、支払い金額の決まり方です。「壊れた分だけ実費が出る」と思われがちですが、実際は違います。地震保険は、損害の程度を4つの区分に判定し、それぞれ決まった割合を支払う仕組みです。スピード重視で生活再建の資金を渡すため、被害を細かく査定するのではなく、段階で区切っているのです。
| 損害の区分 | 支払いの目安(地震保険金額に対して) |
|---|---|
| 全損 | 地震保険金額の全額(100%) |
| 大半損 | 地震保険金額の約6割 |
| 小半損 | 地震保険金額の約3割 |
| 一部損 | 地震保険金額の約5% |
ポイントは「一部損」の幅広さです。建物の主要部分の損害や、地盤の被害など一定の基準に達すると一部損と認定され、地震保険金額の約5%が支払われます。逆に言えば、軽微なヒビや一部の破損では、基準に届かず支払い対象にならないこともあります。「壁が少し割れたのに何も出なかった」という不満は、ここの線引きを知らないことから生まれます。なお、この4段階は2017年の改定で導入されたもので、それ以前の「全損・半損・一部損」の3段階とは区分が異なります。古い契約をそのまま継続している場合、認定区分の考え方が違う可能性があるので、内容を確認しておくと安心です。
損害認定は建物と家財でそれぞれ別に判定されます。建物が一部損でも、家財が大半損ということもあり得ます。被災後の請求では、両方の状況を漏れなく申告することが大切です。
補償額は火災保険の半分まで|建物5,000万・家財1,000万の上限
地震保険の補償額は、自由に好きなだけ設定できるわけではありません。セットで入る火災保険の保険金額の30〜50%の範囲でしか決められず、さらに金額そのものに上限があります。一般に、建物は5,000万円、家財は1,000万円が一契約あたりのキャップです。
つまり、火災保険で建物を3,000万円で契約していれば、地震保険はその30〜50%、すなわち900万〜1,500万円の範囲で設定することになります。ここを理解せずにいると、「地震で全壊したのに、建て直し費用の全額には全然足りなかった」という落差に直面します。これは制度の欠陥ではなく、地震保険が最初から「建て直しの全額」ではなく「生活を立て直す当面の資金」を狙って設計されているからです。
「全額は出ない」を前提に、不足分を貯蓄や他の備えでどう埋めるかまで含めて考えるのが現実的です。地震保険を「保険ですべて賄う手段」ではなく「再スタートの頭金」と捉えると、補償額の設定で迷いにくくなります。
なお、地震が原因で起きた火災は、火災保険ではなく地震保険の対象です。「火事なんだから火災保険で出るはず」と思いがちですが、地震・噴火・津波を直接・間接の原因とする火災は、火災保険の補償から外れます。これは地震保険が必要とされる、もっとも見落とされがちな理由のひとつです。
取りこぼしやすい「割引」と「地震保険料控除」
保険料が全社共通だからこそ、差がつくのは割引と税控除をきちんと使えているかです。地震保険には、建物の耐震性能などに応じた割引が用意されています。代表的なのは次の4つで、いずれか1つだけ適用できます(重複不可)。
- 免震建築物割引:免震構造の建物が対象。割引率は大きめに設定されている。
- 耐震等級割引:住宅性能表示の耐震等級に応じて、等級が高いほど割引が大きい。
- 耐震診断割引:耐震診断・改修で一定の基準を満たした建物が対象。
- 建築年割引:一定の年(新耐震基準導入後)以降に建てられた建物が対象。
これらは自動では付かず、申請と証明書類が必要です。住宅性能評価書、登記事項証明書、耐震基準適合証明書など、割引ごとに求められる書類が違います。新築やリフォームのタイミングは、こうした書類が手元にそろっていることが多く、割引を申請する絶好機。書類がどこにあるか分からないという理由だけで、本来使えた割引を取りこぼすのは惜しいところです。
もうひとつ見逃せないのが「地震保険料控除」です。支払った地震保険料は、所得税・住民税の計算で一定額を所得から差し引ける対象になります。会社員なら年末調整、自営業なら確定申告で手続きします。保険会社から届く控除証明書を使うので、これを捨てずに保管しておくことが第一歩です。割引と控除を合わせれば、実質負担は見た目の保険料より下がります。控除の上限額や計算方法は税制で定められているため、具体的な金額は国税庁や各社の公式情報で確認してください。
「安い地震保険」をうたう勧誘は、制度上ありえない比較です。保険料は全社共通なので、その手の売り文句が出てきたら一歩引いて考えましょう。本当に効くのは、割引の適用と控除の活用です。
賃貸・分譲マンション・戸建てで「何を守るか」が変わる
地震保険が必要かどうかは、住まいの形態で考え方がかなり変わります。一律に「入るべき/不要」と言えないのは、守る対象が人によって違うからです。
| 住まいの形態 | 地震保険で守る対象と考え方 |
|---|---|
| 持ち家・戸建て | 建物も家財も自分のもの。建物の地震保険の必要性が高め |
| 分譲マンション | 専有部分(部屋)と家財が対象。建物全体は管理組合の保険が別にあることも |
| 賃貸 | 建物は大家のもの。自分が守るのは「家財」。家財に地震保険を付けられる |
戸建ての持ち家は、建物が全壊すれば再建の負担が最も重くのしかかるため、地震保険の必要性が高めに考えられます。分譲マンションでやや複雑なのは、自分の部屋(専有部分)と、建物全体(共用部分)で保険の入り方が分かれる点です。共用部分は管理組合がまとめて火災保険・地震保険に入っていることが多く、自分の地震保険は専有部分と家財が中心になります。管理組合の契約に地震保険が含まれているかは、意外と把握されていないので確認しておくと安心です。
賃貸では建物は大家のものなので、自分が備えるのは家財です。「賃貸だから地震保険は関係ない」と思われがちですが、地震で家具・家電がまとめて壊れれば買い直しの出費は小さくありません。賃貸契約でセットになっている火災保険に、家財の地震保険が付いているかどうかを確認しておくと、いざというときの差になります。
地震保険だけでは埋まらない穴と、勧められても急がなくていい特約
地震保険は「火災保険にセットで入る」という仕組み上、契約の場では火災保険側の特約と一緒に案内されます。そのとき、地震保険が引き受けてくれない部分をどこで埋めるのか、逆にどれは後回しでいいのかを整理しておくと、必要以上に厚い契約を結ばずに済みます。ここでは、地震に関連して「一緒に考えたほうがいいもの」と「勧められがちだが優先度が下がるもの」を分けてみます。
本体だけ契約して困りやすいのは「家財」を外したとき
地震保険は建物と家財を別々に契約します。建物にだけかけて家財を外す人は少なくありませんが、地震で最初に壊れるのは、実は建物より家財のほうです。倒れた食器棚、割れた食器、転倒したテレビ、ゆがんだ冷蔵庫。建物の柱や基礎が無事でも、部屋の中はひっくり返っていることがあります。
ここで重要なのが、建物と家財では損害認定の見方が別物だという点です。建物は主要構造部の損害割合で判定しますが、家財は家財全体を「食器類」「電気器具類」「家具類」「衣類寝具類」といったグループに分けて、それぞれの被害から全体の損害割合を出していきます。つまり、建物が一部損にもならないケースでも、家財のほうは半損(大半損・小半損)と判定される余地があります。建物を外して家財だけ契約することもできますので、賃貸にお住まいの方は家財側だけを検討することになります。
逆に、家財契約で対象にならないものがあることも押さえておきたいところです。一般的に、自動車、貴金属・宝石・骨董などで高額なもの、有価証券、通帳、印紙、切手、パソコンの中のデータなどは家財の地震保険では扱われません。自動車の地震被害は、自動車保険の車両保険でも原則として対象外で、地震・噴火・津波に対応する特約が別に用意されている場合に限られます。「家財に入っているから車も大丈夫」と思い込んでいると、いざというときに食い違います。
建物の地震保険金額は、火災保険の保険金額の一定範囲内でしか設定できません。家財も同様です。火災保険側の評価額そのものが実態より低いと、地震保険の上限も自動的に低くなります。「地震保険を厚くしたい」と思ったとき、実は見直すべきなのが火災保険の評価額だった、という順番になることがあります。
火災保険側で先に確認したい「水災」と「破損・汚損」
地震保険とセットで考えたいのが、火災保険本体の補償範囲です。地震が原因の火災は火災保険では支払われず地震保険の扱いになりますが、逆に、地震以外の自然災害は火災保険の担当です。近年の火災保険は補償を選べる形式が主流で、水災を外して保険料を抑える契約も珍しくありません。ハザードマップ上で浸水想定がある土地なのに水災を外していると、地震保険をいくら厚くしても足りない部分が残ります。
また、家財の「破損・汚損」補償は、地震とは無関係の日常的な破損(子どもがテレビを倒した、家具を運んでいて壁を傷つけた)に対応するものです。地震の揺れで壊れたものは、この補償ではなく地震保険側の判定に乗ります。両者を混同したまま「破損・汚損に入っているから地震も何とかなる」と考えていると、請求段階で行き違いになります。
優先度を落としてよいのは、対象が狭い上乗せ商品
地震の補償を厚くする方法として、保険会社独自の「地震危険等上乗せ特約」や、少額短期保険の地震補償商品が案内されることがあります。仕組みとしては、地震保険で足りない分を補うものですが、注意したいのは支払条件です。全損のときだけ支払う、あるいは大半損以上に限る、といった形で対象が絞られている商品があります。実際の地震被害は一部損・小半損の判定に落ち着くことも多く、その帯を拾えない設計だと、支払われる場面が想像より狭くなります。
また、保険料は上乗せした分だけ確実にかかり続けます。地震保険料控除は地震保険部分に対する制度で、上乗せ特約の扱いは商品によって異なります。控除の対象になるかどうかは、契約時に発行される控除証明書の表示で確認するのが確実です。
| 検討するもの | 役割 | 優先度の目安 |
|---|---|---|
| 家財の地震保険 | 倒れた家具・割れた食器・壊れた家電の買い直し | 高い。特に賃貸・分譲マンション |
| 火災保険の水災補償 | 津波以外の浸水、土砂災害 | ハザードマップ次第で高い |
| 自動車の地震対応特約 | 車両の地震・噴火・津波被害 | 車の重要度と保管場所による |
| 地震上乗せ特約 | 地震保険の支払いに追加 | 支払条件を読んでから |
| 高額な貴金属の明記 | 火災保険側での個別扱い | 地震では対象外のため優先度低 |
意外と効くのは、保険以外の備え
地震保険が「生活再建の足がかり」という位置づけである以上、支払われるまでの期間を自力でしのぐ準備が現実的な意味を持ちます。具体的には、家具の転倒防止金具やガラス飛散防止フィルム、通帳や保険証券の写しをまとめた持ち出し用のファイルなどです。特に転倒防止は、家財の損害そのものを減らす効果があります。保険金は壊れたものを買い直すためのものですが、そもそも壊れなければ、生活の混乱自体が小さくなります。
もうひとつ、罹災証明書の存在も覚えておきたいところです。これは自治体が発行するもので、支援金や税の減免、公的な融資などの手続きに使われます。保険会社が行う損害認定とは別の調査ですので、「保険で一部損だったから罹災証明も同じ区分になる」とは限りません。どちらの手続きも、被害状況の写真が判断材料になります。片付ける前に、部屋全体・被害箇所の順で撮っておくことが、両方に効いてきます。
地震保険には「地震発生から一定期間を過ぎた損害は対象外」という制度上の取り決めがあります。また、保険金の請求権にも時効があります。すぐに直せない被害でも、まずは連絡と記録だけは早めに済ませておくほうが安全です。
火災保険に地震保険をつける流れ
地震保険は単独で入れないため、必ず火災保険を起点に考えます。手順は次のとおりです。
- いまの火災保険を確認地震保険が付いているか、付いていないか。まずここを把握する。
- 地域と建物のリスクを知るハザードマップで地震・津波リスク、建物の構造・築年を確認する。
- 補償額を決める火災保険の30〜50%の範囲で、上限(建物5,000万・家財1,000万)も踏まえて設定。
- 使える割引を洗い出す耐震等級・建築年・免震・耐震診断のいずれかに当てはまるか、書類を探す。
- 火災保険にセットして加入会社で保険料の差はないので、火災保険のサービス内容で選ぶ。
- 控除証明書を保管地震保険料控除のため、毎年届く証明書を年末調整・確定申告まで保管。
すでに火災保険に入っていて地震保険が付いていない場合でも、契約期間の途中から地震保険を追加できることがあります。「火災保険の更新まで待たないと入れない」と思い込んで先延ばしにする必要はありません。気になったら、加入中の保険会社や代理店に追加の可否を問い合わせてみましょう。
入ったあとが本番|更新・評価額・割引証明を腐らせない運用
地震保険は、契約して終わりの商品ではありません。火災保険にセットされている以上、火災保険の契約期間に合わせて更新が来ますし、その間に建物の価値も、住んでいる人の暮らし方も変わります。しかも保険料は毎年(あるいは長期一括で前もって)払い続けるものですから、「使い続けるときのコスト」がはっきり存在します。ここでは、契約後に何を見て、何を放置すると損をするのかを整理します。
火災保険の期間に引きずられる更新のタイミング
地震保険の契約期間は最長で5年、火災保険のほうは最長で5年です。かつては長期の火災保険がありましたが、現在は上限が短くなっています。地震保険は火災保険の期間内で設定するため、火災保険が5年契約なら地震保険も1年ごとの自動継続か5年の長期契約かを選ぶ形になります。
ここで意識したいのが、長期契約にすると保険料に長期係数が適用され、1年ずつ更新するより総額が抑えられる仕組みがあることです。一方で、長期にすると途中で条件が変わったときの見直しがひと手間になります。解約して入り直すこともできますが、その場合は未経過分の返れい金の計算が入り、手続きの負担が発生します。数年内に建て替えや引っ越しの予定があるなら短めに、当面動かないなら長めに、という判断が現実的です。
更新案内は郵送やメールで届きますが、住所変更や勤務先のメールアドレス変更で届かなくなることがあります。特に長期契約は次の案内まで年単位の間隔が空きます。契約者情報の連絡先だけは、引っ越しのたびに更新しておくと安心です。
建物の評価額は放っておくと実態からずれる
地震保険の上限は火災保険の保険金額に連動しますから、火災保険の評価額が古いままだと、地震保険も古い前提のまま走り続けます。建築費や資材価格は時期によって動きますので、数年前に設定した再調達価額が、今同じ建物を建て直す金額と一致しているとは限りません。更新のタイミングは、この評価額を見直す数少ない機会です。
逆に、リフォームや増築をしたのに保険会社へ伝えていないケースもあります。延床面積が変わった、屋根を葺き替えた、耐震補強を入れた。こうした変化は、保険金額にも、後述する割引にも影響します。特に耐震補強は、割引の条件を満たす可能性がある一方で、こちらから申し出て証明書類を出さない限り自動では反映されません。
割引の証明書類は、失くすと復元に手間がかかる
地震保険の割引は、建築年割引、耐震等級割引、免震建築物割引、耐震診断割引の四つがあり、重複して使うことはできません。いずれも書類の提出が前提です。建築年割引なら建物登記簿謄本や建築確認書、耐震等級割引なら住宅性能評価書や適合証明書といった書類が求められます。
問題は、これらを更新のたびに探し直すことになる点です。中古で購入した住宅では前所有者からの引き継ぎ書類に紛れていたり、新築でも引き渡し時の分厚いファイルの中に埋もれていたりします。再発行できるものもありますが、発行元に依頼して費用と時間がかかることもあります。契約時に一度取り出したら、写しを取って保険証券と同じ場所にまとめておくのが、次の更新での自分への引き継ぎになります。
割引の適用漏れは、保険会社から指摘されるとは限りません。証明書類を出していなければ、割引なしの保険料がそのまま請求され続けます。「うちは新しい家だから対象のはず」と思っていても、申告していなければ反映されていない可能性があります。証券の記載欄を一度確認してみてください。
毎年の年末調整・確定申告というランニング作業
地震保険料控除は、払った保険料に応じて所得税・住民税の課税所得を下げる制度です。これは一度手続きすれば終わりではなく、毎年の年末調整または確定申告で申告する必要があります。証明書は保険会社から送られてきますが、長期一括で払っている場合は初年度にまとめて届き、以降は各年分が届く形など、会社によって送付のされ方が違います。
注意したいのが、火災保険料の部分は控除の対象にならないことです。証明書には地震保険料の部分だけが記載されますので、支払総額をそのまま書かないようにします。また、平成18年末までに契約した長期損害保険契約は経過措置として旧長期損害保険料控除が使える場合がありますが、地震保険料控除との併用には上限があります。古い契約を引き継いでいる方は、証明書の表示を確認するのが早道です。
被害が出たときの流れと、直すまでの現実的な手順
- 安全を確保して連絡するまず身の安全と、ガス・電気の確認を優先します。落ち着いたら保険会社や代理店へ連絡し、契約番号か証券番号を伝えます。大きな地震のあとは受付が混み合うため、Web受付の窓口が用意されることもあります。
- 片付ける前に写真を撮る部屋の全景、被害箇所の寄り、建物なら外壁・基礎・屋根まわりを撮っておきます。損害認定は主要構造部の損害割合で見ますので、内装だけでなく構造に関わる部分の記録が効いてきます。
- 応急処置は記録を残しながら雨が入るなど、放置すると被害が広がる場合は先に応急処置をしても構いません。その場合も処置前の状態を撮り、業者に依頼したなら明細を保管します。
- 鑑定・立会いに備える建物は損害調査の担当者が確認に来ます。家財は品目リストの提出を求められることがありますので、壊れたものを種類ごとにメモしておくと進みが早くなります。
- 認定区分を確認する全損・大半損・小半損・一部損のどれになったかで支払割合が決まります。判定の根拠に納得できない場合は、説明を求めたり再調査を依頼したりする道もあります。
修理と、その後の契約の扱い
地震保険の保険金は使途が限定されていません。修理に充ててもよく、仮住まいの費用や生活費に回しても構いません。これは「損害を元通りにする」のではなく「生活再建を助ける」という設計から来ています。ただし、修理せずに保険金を受け取った場合、その被害箇所は次に地震があったときに評価が難しくなります。修理の有無にかかわらず、いつ・どこが・どう壊れたかの記録を残しておくと、次の判定でも説明ができます。
もうひとつ、全損の保険金が支払われた場合、その建物・家財の地震保険契約はその時点で終了します。火災保険は続いていても、地震保険部分は消えるということです。建て替えたり買い直したりしたあとに新しく契約し直す必要がありますので、支払いを受けて落ち着いたタイミングで、契約の再設定を思い出せるようにしておきたいところです。
地震のあとには、屋根や外壁の点検を無償で申し出て、その場で契約を迫る業者の話が出てきます。保険金請求の代行をうたって高額な手数料を求めるケースもあります。請求は契約者本人が保険会社へ直接できる手続きです。判断に迷ったら、その場で決めず、まず保険会社の窓口に相談してください。
地震保険でよくあるつまずき
制度の特徴を知らないことから生まれる、ありがちな後悔を整理します。
- 火災保険だけで地震も大丈夫だと思っていた → 地震・津波・地震が原因の火災は火災保険では対象外。
- 全壊すれば建て直し費用が全額出ると誤解 → 補償は火災保険の30〜50%・上限あり。生活再建の資金と捉える。
- 軽い損害なのに支払いを期待 → 4段階の認定基準に届かないと対象外のことがある。
- 「他社より安い地震保険」の勧誘を信じる → 保険料は全社共通。安さの比較は成立しない。
- 使えた割引を申請し忘れる → 耐震等級・建築年などは書類を出せば実質負担が下がる。
- 控除証明書を捨ててしまう → 地震保険料控除を取りこぼす。証明書は必ず保管。
- 被災後の便乗勧誘をうのみにする → まず自分の保険会社に確認。その場で契約しない。
災害後は「保険金で無料修理できる」と持ちかける悪質な勧誘や、保険を装う詐欺が増えがちです。請求や契約をその場で決めず、まず加入中の保険会社へ。不審な勧誘・契約トラブルは、消費生活センター(全国共通電話「188」)に相談できます。
よくある質問
地震保険は会社によって保険料が違いますか?
基本的に同じです。地震保険は政府が再保険で支える半公的な制度で、補償内容も保険料も全社共通に定められています。「他社より安い地震保険」という比較は原理的に成立しません。ただし保険料は、建物の所在地(都道府県)と構造区分によって変わるため、住む場所や建物の造りで金額に差は出ます。会社を選ぶなら、セットになる火災保険のサービス内容で比べましょう。
地震で全壊したら建て直し費用は全額出ますか?
全額は出ません。地震保険の補償額は、セットの火災保険の30〜50%の範囲で、建物5,000万円・家財1,000万円という上限もあります。さらに支払いは損害の程度(全損・大半損・小半損・一部損)に応じた割合です。地震保険は建て直しの全額ではなく、被災後の生活を立て直す当面の資金という位置づけ。不足分は貯蓄など他の備えで補う前提で考えるのが現実的です。
損害が小さいと支払いは受けられないことがある?
あります。地震保険は損害を4段階で認定し、もっとも軽い「一部損」でも一定の基準を満たす必要があります。基準に届かない軽微なヒビや破損は、支払い対象にならないことがあります。なお建物と家財は別々に認定されるため、建物が基準未満でも家財が認定される、という組み合わせもあり得ます。被災後の請求では、建物・家財の両方の状況を漏れなく申告しましょう。
地震が原因の火災は火災保険で補償されますか?
火災保険では対象外です。地震・噴火・津波を原因とする火災は、たとえ結果が「火事」でも火災保険の補償から外れ、地震保険でカバーします。「火事なら火災保険」という思い込みが、地震保険を付け忘れる大きな原因になっています。地震に備えるなら、火災保険に地震保険をセットで付けることを検討しましょう。
耐震性が高いと保険料は安くなりますか?
割引の対象になることがあります。免震建築物割引・耐震等級割引・耐震診断割引・建築年割引の4種類があり、いずれか1つを適用できます(重複不可)。住宅性能評価書や耐震基準適合証明書などの書類を提出して申請します。新築やリフォームのタイミングは書類がそろいやすく、申請の好機です。割引は自動では付かないので、自分の建物が当てはまるか確認しましょう。
地震保険料は税金で戻ってきますか?
地震保険料控除の対象です。支払った地震保険料は、所得税・住民税の計算で一定額を所得から差し引けます。会社員は年末調整、自営業の方は確定申告で手続きします。保険会社から届く控除証明書が必要なので、捨てずに保管してください。控除の上限額や計算方法は税制で定められているため、具体的な金額は国税庁や各社の公式情報で確認しましょう。
賃貸でも地震保険は意味がありますか?
家財への備えとして意味があります。賃貸では建物は大家のものですが、自分の家具・家電などの家財に地震保険を付けられます。地震でまとめて壊れると買い直しの負担は小さくありません。賃貸契約でセットの火災保険に、家財の地震保険が含まれているかは確認を。必要性は、家財の量や貯蓄など自分の状況に合わせて判断しましょう。
古い地震保険の契約はそのままで大丈夫?
一度内容を確認するのがおすすめです。損害認定の区分は2017年の改定で「全損・大半損・小半損・一部損」の4段階になり、それ以前の3段階とは考え方が異なります。古い契約を継続していると、補償額や認定の前提が今と違う場合があります。更新のタイミングなどで、補償額・割引の適用・認定区分が現状に合っているかを点検しておくと安心です。
被災後に「保険で無料修理」と勧誘されたら?
うのみにせず慎重に対応しましょう。災害後は「地震保険を使えば自己負担なしで直せる」とうたう悪質な勧誘や、保険を装う詐欺が増えます。実際には対象外だったり、不要な工事を契約させられたりすることも。まず自分の保険会社に確認し、その場で契約・支払いをしないこと。不審な勧誘や契約トラブルは、消費生活センター(全国共通電話「188」)に相談できます。
地震保険は途中から追加できますか。火災保険の更新まで待つ必要はありますか。
火災保険の契約期間の途中でも、地震保険だけを追加することができます。更新を待つ必要はなく、追加した時点から契約期間の残り分に応じた保険料を払う形になります。ただし建物の評価額や割引の証明書類の確認が入るため、書類の準備には少し時間を見ておくと安心です。
隣家の火事が地震で燃え移った場合、火災保険と地震保険のどちらで支払われますか。
地震が原因で発生した火災による損害は、火元が自宅でも隣家でも地震保険の扱いになります。通常の火災であれば火災保険で支払われますが、地震・噴火・津波を原因とする火災は火災保険では対象外とされているためです。地震保険に加入していなければ、この場面では補償が受けられません。
マンションの共用部分の地震保険は、自分で入る必要がありますか。
分譲マンションの共用部分は、管理組合が一括で火災保険と地震保険を契約しているのが一般的です。区分所有者が個人で入るのは専有部分と家財になります。ただし管理組合が地震保険を付けていないこともありますので、総会資料や管理会社への確認で、共用部分の加入状況を一度調べておくとよいでしょう。
一度保険金を受け取ると、次の地震では支払われなくなりますか。
一部損から小半損・大半損までであれば契約は継続し、次の地震でも支払いの対象になります。終了するのは全損の保険金が支払われた場合で、そのときは建物や家財の地震保険契約がその時点で消滅します。なお同じ箇所の被害を繰り返し請求する場合、前回修理したかどうかが判定に影響することがあります。
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