火災保険の選び方|補償範囲・建物と家財・賃貸と持ち家の違い

保険 公開:2026-05-17 更新:2026-08-19 読了 約 28 分

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「火災保険」という名前が、いちばんの誤解の元

火災保険という呼び名のせいで、「火事を出さなければ関係ない保険」と思っている人がとても多い。けれど実際に保険金が支払われる事故を理由別に見ると、火事そのものより、台風で屋根材が飛んだ・大雪で雨どいが壊れた・上の階からの水漏れで天井が落ちた・物が飛んできて窓が割れたといった「住まいの突発的なトラブル」のほうがずっと出番が多い。火災保険は、名前に反して住まい全体のケガの治療費に近い性格を持っています。

だからこそ厄介なのは、契約のきっかけが受け身になりがちなこと。持ち家なら住宅ローンの手続きで言われるまま、賃貸なら入居時に不動産会社からセットで渡される。「入っていることは知っているが、何が対象で何が対象外かは知らない」状態で何年も過ぎ、いざ被害に遭ってから「それは出ません」と言われて初めて中身を読む——これがいちばんありがちな後悔です。この記事は特定の保険会社をすすめるものではなく、補償の中身・建物と家財の分け方・賃貸と持ち家の違い・金額の決め方・地震保険との関係・契約期間の最近の事情・被害後に湧いてくる悪質勧誘までを、加入前に一度立ち止まって読めるよう整理したものです。

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この記事は一般的な情報提供であり、特定商品の加入をすすめるものではありません。補償内容・条件・保険料は商品や住まいの条件で大きく異なります。最終的な判断は各社の公式情報・約款を確認し、不明点は保険会社や専門家に相談してください。

火事以外に、こんなトラブルが対象になる

まず「どんな事故で出るのか」を具体的にイメージしておくと、後の判断がぐっと楽になります。火災保険の補償は大きく次のような種類に分かれ、プランによって付けたり外したりできます。

補償の種類こんなときに出る(例)
火災・落雷・破裂爆発失火・もらい火、落雷で家電が壊れた、ガス爆発など。火災保険の土台
風災・雹災・雪災台風で屋根瓦やカーポートが飛んだ、大雪で雨どい・ベランダが壊れた
水災大雨や川の氾濫で床上浸水、土砂崩れで建物が損傷。地域リスクで要否を判断
水濡れ上階や自室の給排水設備の事故で天井・壁・家財が濡れた(水災とは別物)
盗難・破損汚損空き巣に窓を割られた、模様替え中に家電を倒して壊した(付けるかは選べる)

ここで間違えやすいのが「水災」と「水濡れ」の違いです。水災は外から来る水——大雨・洪水・高潮・土砂崩れ。水濡れは家の中の配管や設備の事故で、上の階からの漏水もこちら。名前が似ているのに守る場面がまったく違うので、「うちは高台だから水災は要らない」と外したつもりでも、マンションの上階漏水は水濡れ補償でカバーされる、といった具合に役割を取り違えないことが大切です。

補償は広げるほど保険料が上がる一方、削りすぎれば肝心なときに出ません。「自分の住まいで現実に起こりうる事故」を軸に、要るものは確保し、起こりにくいものは外す——このメリハリが、火災保険でムダを減らす一番の勘所です。

建物と家財──「両方入っているか」を必ず確かめる

火災保険でいちばん事故の多い勘違いが、補償の対象を取り違えていること。火災保険は「建物」と「家財」という別々の入れ物に分かれていて、契約上はどちらか片方だけ、ということが普通に起こります。

対象含まれるもの含まれないもの(例)
建物壁・床・屋根、基礎、作り付けの設備(システムキッチン、ビルトイン浴槽、固定された棚など)家具・家電・衣類
家財家具・家電・衣類・食器など「持って出られるもの」全般家そのもの、建物に固定された設備

たとえば火事で家も中身も焼けたとき、「建物」だけの契約なら家財はゼロ回答。逆に「家財」だけなら建物の修理費が出ません。とくに見落としやすいのが、持ち家で建物にだけ入っていて家財が手薄なケース。家を建て直す費用は出ても、テレビ・冷蔵庫・洗濯機・ベッド・衣類をすべて買い直す費用が補償されず、家財一式の再購入で数十万〜百数十万円規模の自己負担が残ることがあります。

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家財には1点いくら以上は「明記物件」として申告が要るという決まりが多くあります。30万円を超える宝飾品・貴金属・美術品・骨董などは、契約時に申し出ておかないと、いざというとき満額が出なかったり対象外になったりします。価値の高い物がある人は、家財の中身も棚卸ししておくと安心です。

「一式そろっている」の範囲は、思っているより狭い

前の節の建物と家財が別々の入れ物だという話は、言われれば当たり前なのに、契約している本人が取り違えているという点が肝心です。ひとまとまりに見えていたものが、実は二つに分かれていた——この形の勘違いは、名前がひとつしか付いていないときに起きやすい。

買い物でも同じ取り違えが起きます。ひとつの商品名で呼ばれているのに、実際に使える状態にするには別売りの部品や、対応する台や、追加の保証が要る。写真に写っているものが全部付いてくるとは限りませんし、「セット」と書いてあっても中身の組み合わせは商品ごとに違います。ひとつの名前で呼べることと、ひとつの買い物で済むことは別です。

確かめ方は保険と変わりません。名前ではなく、対象として並んでいる品目を一つずつ見る。保険なら建物と家財の両方に入っているか、買い物なら同梱物の欄と別売り表示。保険の場合は事故が起きてからでは取り返しがつきませんし、買い物でも、届いてから足りないと分かれば送料と時間をもう一度払うことになります(→ 一式そろえる範囲から決める)。

金額の決め方──「再調達価額」でいくらに設定するか

火災保険でもう一つつまずきやすいのが、補償金額(保険金額)の決め方です。基本になるのは「再調達価額(新価)」という考え方。これは「いま同じ家・同じ家財をもう一度そろえるのにかかる金額」を指します。古さで価値を割り引いた中古相当の金額(時価)ではなく、買い直すのに要る金額で備えるのが、近年の主流です。

建物の金額は、購入価格や土地代とは切り離して「その建物を新築し直すといくらか」で考えます。ここを低く設定しすぎると、全焼でも建て直せるだけの保険金が出ない「一部保険」になり、逆に高くしすぎても、実際の建て直し費用を超える分は支払われないため保険料のかけ過ぎになります。実態に合った金額に寄せることが、過不足のない備えの近道です。

家財は、世帯人数や年代でおおまかな目安が示されることが多く、独身の単身世帯なら数百万円、ファミリー世帯ならもう一段上、といったレンジで考えるのが一般的。とはいえ目安はあくまで目安なので、大型家電や買いそろえた家具が多い家ほど厚めに、物が少ない家は控えめに、と自分の暮らしに合わせて調整します。具体的な設定額は各社のシミュレーションや見積もりで確認してください。

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免責金額(自己負担額)も保険料に効きます。少額の修理は自分で負担する前提で免責を高めに設定すると保険料は下がり、ゼロに近づけると上がります。「小さな出費は自分で、大きな損害は保険で」という線引きを、家計に合わせて決めると無駄が減ります。

賃貸と持ち家で、備える中身がまるごと変わる

同じ「火災保険」でも、賃貸と持ち家では守るべきものが根本から違います。ここを取り違えると、要らない補償にお金を払ったり、肝心の補償が抜けたりします。

持ち家の場合

建物も自分のものなので、建物と家財の両方を考えるのが基本。住宅ローンを組むときは、金融機関から火災保険の加入を条件にされることがほとんどです。ただし「ローンで言われた最低限」のままだと、水災や家財が手薄なことがあるので、契約書を一度開いて、対象(建物・家財)と補償範囲を自分の目で確かめておきたいところです。

賃貸の場合

建物は大家のものなので、借りている人が備えるのは主に「家財」と「賠償」の二本柱です。とくに賃貸特有なのが次の二つの賠償補償で、入居時のセット契約に含まれていることが多い反面、中身を確認しないまま更新し続けている人が大半です。

  • 借家人賠償責任:自分の不注意で部屋を損傷させ、大家に原状回復の賠償義務を負ったときの備え。火を出して部屋を焦がした、水を漏らして床を傷めた、といった「貸主への賠償」を支える、賃貸では事実上の必須補償。
  • 個人賠償責任:日常生活で他人にケガをさせたり物を壊したりしたときの備え。自室の水漏れで階下の住人の家財を濡らした、自転車で歩行者にぶつかった、といった「第三者への賠償」をカバーし、住まい以外の生活全般に効く。

賃貸契約でセットになっている火災保険は、不動産会社の指定プランをそのまま更新しがちですが、家財の補償額が今の暮らしに合っているか、賠償の上限が十分か(個人賠償は1億円以上が安心の目安とされることが多い)は、引っ越しや更新のたびに見直す価値があります。原則として加入は自由なので、内容に納得して契約することが大切です。

地震の被害は、火災保険だけでは1円も出ない

意外と知られていないのに影響が大きいのが、ここ。地震・噴火・津波による損害は、火災保険では対象外です。しかも見落としやすいのが、「地震が原因で起きた火事」も火災保険では出ないという点。揺れで倒れた暖房器具から燃え広がっても、原因が地震なら火災保険ではなく地震保険の領域になります。

地震に備えるには、地震保険を火災保険にセットで付ける必要があります。地震保険は単独では入れず、必ず火災保険とのセット。制度上、保険金額は火災保険の30〜50%の範囲で設定する決まりで、地震保険だけで建物を丸ごと建て直せるわけではありません。あくまで「被災後の当面の生活を立て直すための一時金」という位置づけで考えるのが現実的です。

地震保険は国が関わる公的性格の強い保険で、補償内容や基本の保険料はどの会社で入っても同じ仕組み。ただし建物の構造や所在地、耐震性能に応じた割引制度があるので、自宅が割引の対象になるかは確認しておくとよいでしょう。日本に住む以上、付けるか付けないかは「要るかどうか」より「どこまで備えるか」で考える人が多い補償です。

契約期間が短くなった──「長期一括」が効きにくい時代

火災保険を考えるうえで近年おさえておきたいのが、長期契約が組みにくくなっているという事情です。かつては10年など長期で一括契約し、まとめ払いで割安にする選び方が定番でした。ところが自然災害の増加を背景に、契約できる最長期間が5年へと短縮され、保険料そのものも全国的に見直し(値上げ傾向)が続いています。

これは家計にとって地味に痛い変化ですが、見方を変えれば見直しの周期が自然と短くなるということでもあります。更新のたびに、住まいの状況・家財の増減・補償範囲が今の暮らしに合っているかをチェックする機会が来る。「10年ほったらかし」で実態と契約がずれていく、という以前の落とし穴は減りました。長期割引のうまみは薄れたぶん、こまめに中身を整える前提で付き合うのが、これからの火災保険との距離の取り方です。

支払い方法も、長期一括・年払い・月払いで保険料の総額が変わります。一括や年払いのほうが割安になりやすい一方、まとめて支払う負担もある。家計のキャッシュフローと相談して選ぶのがよく、具体的な金額差は各社の見積もりで確認してください。

代理店・ネット直販・共済──同じ「火災保険」でも入り口で中身が変わります

火災保険は、どこから申し込むかで補償の組み立て方も、事故が起きたときに電話をかける先も変わります。商品の優劣というより、誰が建物を評価し、誰が特約を取捨選択するのかが違うと考えると整理しやすくなります。ここでは実際に迷いやすい四つの分かれ道を並べます。

賃貸は「不動産会社に出された保険しか入れない」とは限りません

部屋を借りるとき、契約書類の束に最初から申込書が挟まっている形で火災保険を案内されることがあります。まず確かめたいのは、賃貸借契約書に書かれているのが「貸主指定の保険に加入すること」なのか、「借家人賠償責任と個人賠償責任を含む保険に加入し、証券の写しを提出すること」なのかという点です。後者であれば、自分で選んだ契約に切り替えられる余地があります。

ただし切り替えるなら、借家人賠償責任の保険金額が管理会社の求める水準以上か、補償の開始日が入居日より前になっているか、更新日が賃貸借契約の更新とずれないかを自分で管理する必要があります。ここを間違えると、更新のはざまに無保険の期間ができます。手続きを自分で背負う代わりに、家財の金額を自分の持ち物に合わせて決められる、破損・汚損まで付けるかを選べる、といった自由が手に入る──その交換だと考えてください。

持ち家は「建物の評価を誰がやるか」で代理店型とネット直販が分かれます

住宅を買うと、ローンを組む金融機関やハウスメーカーから提携代理店を紹介される流れが一般的です。代理店型の利点は、建築請負契約書や見積書を見ながら建物の保険金額を決めてもらえること、そして事故のときに顔の見える窓口が残ることです。台風の翌日のように受付が混み合う場面で、担当者に写真の撮り方から相談できるのは小さくない差です。

一方のネット直販は、構造級別・延床面積・建築年月・所在地といった項目を自分で入力して見積もりを出します。数字がはっきりしている新築なら入力に迷いはほとんどありません。逆に、中古で買った家、増築や改築をしている家、一部を店舗や事務所として使っている家は、入力項目に当てはめる段階で判断が要ります。ここを取り違えると、契約は成立していても支払いの場面で建物の評価をやり直すことになります。

火災共済は分かりやすさと引き換えに、支払いの天井の考え方が違います

火災共済は口数制で、建物と家財の掛金体系がそろっており、加入時に迷う項目が少ないのが特徴です。ただし支払いは加入口数に応じた上限で決まるため、再調達価額いっぱいまで出る設計とは限りません。風水害については独自の限度が設けられていることも多く、「火災は手厚いが、台風の被害は別ものさし」という構造になっている場合があります。

もう一点、地震への備え方が民間の火災保険と違います。民間の地震保険は火災保険とセットでしか加入できない仕組みですから、共済を選んだ場合は共済側の地震見舞金の枠で考えることになります。地震のときに建て直しの原資を求めるのか、当面の生活費を求めるのかで、向き不向きが分かれます。

分譲マンションは、管理組合の保険と自分の保険の境目を先に確かめる

マンションでは、廊下・外壁・エレベーターなどの共用部は管理組合がまとめて契約し、部屋の中と家財は区分所有者が個別に契約します。問題は境目で、バルコニー、玄関扉、窓ガラス、専用庭がどちら扱いかは管理規約によって違います。上の階からの水漏れも、自分の水濡れ補償で先に部屋を直すのか、相手の個人賠償責任で直してもらうのかで手順が変わります。管理規約と組合の保険の内容を一度読んでから、自分の契約に何を足すかを決めると、同じ補償を二重に買わずに済みます。

あなたの状況向きやすい入り口理由
賃貸で、指定の記載がない自分で選ぶ契約家財の額と破損・汚損の要否を自分で決められる
賃貸で、更新のたびに書類管理が面倒不動産会社の窓口賃貸借契約と更新日がそろい、切れ目ができにくい
新築で建築費の書類がそろっているネット直販も選択肢入力すべき数字が確定していて評価がぶれない
中古・増改築あり・店舗併用代理店型用途と構造の当てはめに判断が要る
掛金の分かりやすさを最優先火災共済口数制で仕組みが単純。ただし上限の考え方を要確認
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入り口が違っても、支払われるかどうかを決めるのは約款の文言です。窓口の親切さと補償の広さは別の話なので、比べるときは必ず補償項目の一覧を横に並べてください。

見積書と保険証券の言葉──どこを見れば同じ土俵で比べられるか

火災保険の見積書は、家電のスペック表のように数値が並んでいるわけではありません。言葉の定義そのものが支払額を左右するので、用語の意味が分かると比較の精度が一段上がります。ここでは、証券や申込画面で必ず目にする表記を、見る順に沿って読み解きます。

「いくら出るか」を決める三つの言葉

まず保険金額は、契約で設定した支払いの上限です。これに対して保険価額は、その建物や家財の実際の値打ち。両者がそろっていれば実損分がそのまま支払われますが、保険金額が保険価額を下回っている状態(一部保険)だと、損害額に対して不足の割合だけ削られて支払われることがあります。これが比例てん補です。逆に保険価額より大きい保険金額を設定しても、その分だけ多く受け取れるわけではありません。

その保険価額を何で測るかが再調達価額(新価)時価の違いです。再調達価額なら同等のものを新しく用意する費用が基準になり、時価だと経過年数分の目減りが差し引かれます。現在の契約はほとんどが再調達価額ですが、古い証券には「時価」「価額協定保険特約」といった表記が残っていることがあります。長く同じ契約を続けている方は、この一語だけでも確認する価値があります。

自己負担を決める「免責金額」と、二つの方式

免責金額は自己負担額のことです。設定を大きくすると保険料は下がりますが、小さな被害では保険金が出なくなります。ここで方式の違いに注意が必要で、損害額から自己負担分を差し引いて支払う免責方式と、一定の損害額を超えたときだけ全額を支払うフランチャイズ方式があります。とくに風災・雹災・雪災は、以前はフランチャイズ方式が主流でした。証券に「風災による損害が一定額以上のとき」と条件付きで書かれていれば、それはフランチャイズ方式です。この一行があるだけで、瓦が数枚飛んだ程度の被害は対象外になります。

水災だけ、支払いの条件が別建てになっている

水災は他の補償と違い、支払いの入口に条件が付くのが一般的です。よくあるのが「床上浸水、または地盤面から一定の高さを超える浸水」「建物の損害割合が一定以上」といった要件で、これを満たさないと床下浸水では出ません。さらに、損害額の全額ではなく一定割合を支払う縮小てん補型の設計もあります。近年は所在地の水災リスクに応じて保険料を区分する仕組みも導入されており、同じ補償名でも地域によって負担が変わります。「水災あり」と書いてあるかどうかだけでは比べられないのはこのためです。

構造級別(M・T・H)は保険料の土台

建物の欄にあるM構造・T構造・H構造は、燃えにくさの区分です。おおまかにM構造はコンクリート造の共同住宅、T構造は鉄骨造や耐火・準耐火の建物、H構造はそれ以外の木造建物にあたります。同じ補償内容でも級別が違えば保険料は大きく変わるので、見積もりを比べる前に、各社で同じ級別が選ばれているかを確認してください。級別を裏づけるのは建築確認申請書、住宅性能評価書、パンフレットの構造欄などです。

本体の補償以外に並ぶ「費用保険金」と特約

証券の下のほうには、臨時費用保険金、残存物取片づけ費用保険金、失火見舞費用保険金、損害防止費用、地震火災費用保険金といった項目が並びます。これらは損害そのものではなく、片づけや当面の出費に充てる枠です。付いているかどうか、上限が損害保険金の何割かは商品によって差があり、同じ火災の被害でも手元に残る額が変わります。

特約側では、個人賠償責任借家人賠償責任、類焼損害特約あたりが要点です。個人賠償には示談交渉サービスが付くものと付かないものがあり、クレジットカードや自動車保険にすでに付いていることも多いので、重複していないかを見てください。実際の損害を補うしくみですから、二か所で契約しても二重には受け取れません。

家財の「明記物件」と地震保険の表記

家財のうち、一定額を超える貴金属・宝石・美術品・骨とう品などは明記物件と呼ばれ、契約時に申告して明細に載せないと支払いに上限がかかります。高価な物をお持ちなら、家財の総額を上げるだけでは足りません。

地震保険は独立した契約ではなく、火災保険の保険金額の30〜50%の範囲で設定する仕組みです。支払いは全損・大半損・小半損・一部損の4区分で、区分ごとに決められた割合が支払われます。建築年割引、耐震等級割引、免震建築物割引、耐震診断割引という区分があり、重ねて使うことはできず、それぞれ証明書類の提出が要ります。証券に割引名が入っているかどうかは、必ず自分の目で確かめてください。

同じ条件でそろえて比べる──火災保険の比較のコツ

火災保険は商品ごとに補償の組み合わせが細かく違うため、「保険料の安さ」だけで並べると中身がバラバラのものを比べることになり、判断を誤ります。実際に効く比べ方は、次の順番です。

  1. 守る対象を確定する賃貸か持ち家か、建物・家財のどちらを(または両方を)対象にするかを先に決める。これがブレると比較が成立しない。
  2. 住まいのリスクで補償範囲を決めるハザードマップで水災リスクを確認し、風災・雪災・盗難・破損などを「要る/要らない」で仕分けする。
  3. 金額と免責をそろえる建物・家財の保険金額、免責金額(自己負担額)を同じ前提に固定してから各社を並べる。
  4. 地震保険の有無を共通にする付ける前提なら全社に付けて比べる。地震保険部分はどこも同条件なので、差が出るのは火災部分。
  5. 同条件で複数社の保険料を比較するここまでそろえて初めて、純粋な「同じ補償でいくらか」の比較になる。一括見積もりサービスや代理店を使うと効率的。

ネット完結型のダイレクト系は代理店手数料が乗らないぶん保険料を抑えやすく、代理店型は対面で補償設計や保険金請求をサポートしてもらえる、という性格の違いがあります。「安いほうがいい」か「相談しながら決めたい」かで入り口を選ぶと、自分に合うルートが見えてきます。割引・キャンペーン・支払い方法ごとの料率は各公式で必ず確認してください。

被害に遭ったあと──「保険で無料修理」の落とし穴

火災保険でいちばん注意したいトラブルは、加入時ではなく被害に遭ったあとに湧いてきます。台風や大雪のあと、「火災保険を使えば自己負担ゼロで屋根を修理できますよ」と訪問してくる業者の勧誘です。これは全国の消費生活センターに相談が絶えない典型的な手口で、放置すると保険金そのものを失いかねません。

よくあるパターンは、実際には保険の対象外の損傷なのに「申請すれば下りる」と言って高額な工事契約を結ばせる、保険金の何割もの手数料を取る、虚偽の申請を持ちかける、といったもの。虚偽の保険金請求に加担すると、契約者自身が詐欺に問われる恐れすらあります。被害に遭ったら、まず動くべきは業者ではなく自分が契約している保険会社。対象になるか、いくら出るか、どう申請するかは保険会社が教えてくれます。

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慌てて契約しないための基本:①「自己負担ゼロ」「絶対下りる」をうたう勧誘はうのみにしない ②工事契約の前に必ず保険会社へ確認 ③訪問販売で結んだ契約はクーリング・オフできる場合がある ④不安なときは消費生活センター(全国共通電話「188」)に相談。被害直後ほど冷静さが利益を守ります。

申し込みボタンを押す前に、この順番で見積書をなぞる

火災保険は、契約したあとに直せる項目と、事故が起きてからでは取り返しがつかない項目が混在しています。以下は上から順に見ていくためのチェックリストです。それぞれ「ここがズレていると何が起きるか」まで書いたので、見積書や申込画面を開いた状態でたどってみてください。

  1. 物件の基本情報を先に書き出す所在地、構造、延床面積、建築年月、用途(専用住宅か併用住宅か)。ここがズレたまま各社の見積もりを取ると、保険料の差が条件の差なのか商品の差なのか判別できません。契約後に構造級別の訂正が入れば、保険料の追加や返還が発生します。
  2. 建物の保険金額の「根拠」を確認する新築時の建築費が分かるならその額を、分からなければ新築費単価法や年次別指数法で算出します。過小に設定すると比例てん補で満額が出ず、過大に設定しても余分に受け取れるわけではありません。根拠が空欄の見積書は、その時点で比較対象になりません。
  3. 家財は目安表を出発点にして、部屋を一周する家族構成別の目安表はあくまで平均値です。楽器、自転車、大型家電、仕事用の機材が多い家では実態と離れます。低すぎれば買い直しが足りず、高すぎれば保険価額を超えた分が無駄になります。
  4. 補償項目を紙に書き出し、全社を同じ組み合わせにそろえる火災・落雷・破裂爆発/風災雹災雪災/水災/盗難/水濡れ/外部からの物体の落下/騒擾/破損・汚損。一社だけ水災を外した見積もりは当然安く見えます。項目名が同じでも支払い条件が違うことがあるので、条件の一文まで読み比べてください。
  5. 免責金額と、その方式をそろえる自己負担額が各社バラバラのまま並べても、保険料の差に意味はありません。とくに風災がフランチャイズ方式か免責方式かで、小規模な被害の扱いが正反対になります。
  6. 水災を付けるかどうかは、階数と地形の両方で判断するハザードマップの浸水想定だけでなく、周囲より低い土地か、近くに水路や急斜面があるかも見ます。高台でも排水が追いつかない内水氾濫は起こりますし、集合住宅の上層階なら必要度は下がります。「安いから外す」ではなく「起きたときに自力で直せるか」で決めてください。
  7. 特約が他の契約と重複していないか調べる個人賠償責任はクレジットカード、自動車保険、傷害保険、共済に付いていることがよくあります。実損を補う保険なので、二契約あっても支払いは重複しません。ただし示談交渉サービスの有無は違うことがあるため、残す一本はサービス付きを選ぶのが実用的です。
  8. 地震保険の有無と、割引の証明書類を確認する地震保険は火災保険とセットで加入する仕組みで、後から中途付帯もできます。ただし建築年割引や耐震等級割引は書類を出さないと適用されません。住宅性能評価書や耐震等級の証明書がどこにあるか、この段階で探しておくと二度手間になりません。
  9. 保険期間・払込方法・自動継続の扱いを見る賃貸では、賃貸借契約の更新日と保険の満期日がずれていると、気づかないうちに無保険の日が生まれます。自動継続なのか、案内が来てから手続きするのかも確認してください。口座振替やクレジット払いの場合、カードの有効期限切れで失効しないよう更新時期を控えておくと安心です。
  10. 事故受付の窓口と、報告から支払いまでの手順を読む受付は24時間なのか平日日中のみか、写真はどの形式で送るのか、修理業者を保険会社が手配するのか自分で探すのか。台風の直後は電話がつながりにくいので、Webから受け付ける導線があるかは実用面で効きます。ここを知らないまま先に工事を始めると、被害状況の証拠が残らず立証に苦労します。
  11. 住宅ローンがあるなら質権設定の有無を確認する金融機関が保険金に質権を設定している場合、支払われる保険金は先に金融機関へ回ります。修理費として手元に受け取る想定でいると、資金繰りの前提が崩れます。近年は設定しない扱いも増えているので、思い込みで判断しないでください。
  12. 申込書の告知事項を自分で読んで署名する建物の用途、事業での使用、長期間の不在、同居人の有無などは告知事項に含まれることがあります。担当者が代わりに埋めた内容をそのまま署名すると、事実と違ったときに支払いをめぐる争いになります。読み上げてもらうのではなく、自分の目で一行ずつ確かめるのが結局いちばん早い方法です。
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契約が成立したら、証券(またはWeb証券のPDF)と補償内容の一覧を、家族が分かる場所に控えておいてください。被害に遭った直後は、契約先の社名すら思い出せないことがあります。保険証券番号と事故受付の連絡先だけでも、スマートフォンのメモに残しておくと動きが速くなります。

よくある質問

火災保険は火事のときしか使えないのですか?

いいえ。むしろ火事以外で使う場面のほうが多いくらいです。台風で屋根が飛んだ、大雪で雨どいが壊れた、落雷で家電が壊れた、上階からの漏水で天井が濡れた、空き巣に窓を割られた——こうした住まいの突発的なトラブルが幅広く対象になります。どこまでカバーするかはプランで選べるので、名前のイメージだけで判断せず、自分の契約の補償範囲を一度確認しておきましょう。

建物にだけ入っていれば、家財は補償されますか?

されません。建物と家財は別々の補償で、「建物」だけの契約では家具・家電・衣類などの家財は対象外です。持ち家で建物にだけ入っていると、家は建て直せても中身を買い直す費用が出ず、数十万〜百数十万円規模の自己負担が残ることがあります。守りたいのが家そのものか、中の物か、両方かを確かめて、必要なら家財も対象に加えてください。

「水災」と「水濡れ」は何が違うのですか?

守る場面がまったく違います。水災は大雨・洪水・高潮・土砂崩れなど「外から来る水」への補償で、地域のリスクで要否を判断します。水濡れは家の中の給排水設備の事故による濡れで、上の階からの漏水もこちらです。「高台だから水災は不要」と外しても、マンションの上階漏水は水濡れ補償の領域。名前が似ているぶん、どちらが何を守るのかを取り違えないことが大切です。

補償金額はいくらに設定すればいいですか?

基本は「再調達価額(新価)」=同じ家・家財をいま買い直すのに要る金額で考えます。建物は購入価格や土地代ではなく「新築し直す費用」が目安で、低すぎると全焼でも建て直せず、高すぎても払われない分が出てかけ過ぎになります。家財は世帯人数や年代の目安を土台に、物が多い家は厚め、少ない家は控えめに調整を。具体額は各社のシミュレーションで確認してください。

地震で家が壊れたら火災保険で補償されますか?

されません。地震・噴火・津波による損害、そして地震が原因の火災は、火災保険の対象外です。備えるには地震保険を火災保険にセットで付ける必要があり、単独では加入できません。保険金額は火災保険の30〜50%の範囲という制度上の上限があり、建物を丸ごと建て直せる額ではなく「被災後の生活を立て直す一時金」と考えるのが現実的です。耐震性能などの割引対象になるかも確認を。

賃貸でも火災保険に入る必要がありますか?

多くの場合、必要です。建物は大家のものですが、自分の家財に加え、部屋を損傷させたときの「借家人賠償責任」、他人にケガや損害を与えたときの「個人賠償責任」に備える意味があります。原則として加入は自由ですが、賠償の備えがないと大きな自己負担を背負いかねません。不動産会社の指定プランをそのまま更新しがちなので、家財額や賠償の上限が今の暮らしに合っているか、更新時に見直しましょう。

火災保険を10年でまとめて契約できますか?

現在は最長5年に短縮されています。自然災害の増加を背景に、かつての10年など長期一括契約は組めなくなり、保険料も値上げ傾向が続いています。長期割引のうまみは薄れた一方、更新の周期が短くなるぶん、家財の増減や補償範囲を見直す機会が増えたとも言えます。「契約しっぱなしで実態とずれる」落とし穴は減るので、こまめに中身を整える前提で付き合うのがよいでしょう。

台風のあと「火災保険で無料修理できる」と言われたら?

うのみにせず、契約や工事の前に必ず自分の保険会社へ確認してください。実際は対象外なのに高額工事を結ばせる、保険金の何割もの手数料を取る、虚偽申請を持ちかけるといった手口が全国で相談されています。虚偽の請求に加担すると契約者自身が詐欺に問われる恐れも。訪問販売の契約はクーリング・オフできる場合があり、不安なときは消費生活センター(全国共通電話「188」)に相談できます。

引っ越したら、いま入っている火災保険はどうすればいいですか?

賃貸から賃貸なら、住所変更の手続きで引き継げる場合と、解約して新居で入り直す場合があります。建物の構造や所在地が変わると保険料も変わるためです。解約する場合は残りの期間に応じた保険料が戻ることが多いので、退去日が決まった時点で保険会社へ連絡してください。放置すると返還を受けそびれます。

火災保険で保険金を受け取ると、翌年の保険料は上がりますか?

自動車保険のような等級制度は火災保険にはないため、保険金を受け取ったこと自体で個人の保険料が上がる仕組みではありません。ただし契約更新時に、災害の発生状況や建物の状態を踏まえて料率そのものが改定されることはあります。請求をためらう理由にはならないと考えてよいでしょう。

同じ家で火災保険を二つ契約していたら、二倍受け取れますか?

受け取れません。火災保険は実際の損害を補うしくみなので、契約が複数あっても支払いの合計は損害額が上限で、各契約で按分されます。賃貸で不動産会社経由と自分の契約が重なっているケースは意外と多いので、証券を並べて重複を確認し、どちらかに整理するのがおすすめです。

台風の被害に気づいたのが数か月後でも、保険金は請求できますか?

保険法では保険金の請求権の時効は三年とされており、その範囲内であれば請求は可能です。ただし時間が経つほど、その台風による損害だと示すのが難しくなります。気づいた時点で被害箇所の写真を撮り、日付が分かる形で残したうえで、早めに保険会社へ連絡してください。

実家が空き家になりました。今の火災保険をそのまま続けられますか?

人が住まなくなると、住宅物件ではなく一般物件として扱われ、保険料や引き受け条件が変わることがあります。告知せずに放置すると、支払いの段階で問題になりかねません。相続や転居で誰も住まなくなったら、その時点で保険会社に状況を伝え、契約の切り替えが必要か確認してください。

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